究極超人あ〜る
#1



著者 ゆうきまさみ
出版社 小学館
掲載誌 少年サンデー
発行日 1986/2/15
定価 359円
オタク 2.60
パロディ 2.60
シリアス 1.60
ギャグ 4.10
痛さ 1.50
好きさ 4.60
「今日はわが校光画部の撮影旅行で宇南山にきています。あ、えーと光画部っていうのは……」
「一般にいうところの写真部です」

 というわけで文科系部活漫画の金字塔。二十代後半から三十代のオタクなら、野球やサッカー部より光画部に憧れる青春を送った人間は多数派な筈!
 厳密に言うならば、この漫画はオタネタ作品のカテゴリーからは外れる。写真部だからって撮影技術があーだこーだといった蘊蓄も無いし、写真部の名を借りたアニメ・漫画オタクの寄り合い所というわけでもない。
 仮に今「似たような」漫画がったとしてもノミネート対象となりえる確率は実に低いものとなろう。だがしかし。
「漫画における写真部と、現代視覚文化研究会の活動は、それぞれの年代を代表していると言えよう」
 もえたん2の例文にもこう書かれている。そう、この作品はオタネタ漫画を語る上で欠かすことができない歴史的名著なのだ。
 というかむしろ、ダメな雰囲気の部活動漫画の始祖と言えよう。全国制覇を目指すわけでもなく、部活動すらそっちのけでただひたすらに放蕩する。
 そんな高校生活を理想に思えたオタク予備軍の何と多い事か(笑)
 とにかくスラップスティックコメディー。日常に様々な不条理を投げ込み、部員達はステキな程のバイタリティーで乗り越え、あろうことか楽しむ。これが実に羨ましい!
 重ね重ね、現在のオタネタ作品として存在したとしたら精々「パロディが入る」程度であり、条件不充分と認定されるであろう漫画であります。が、当時を考えれば「この雰囲気、この匂いこそオタネタよ」とラルも認める逸品です(えー
 いや、でもこれくらいのクオリティがあればその「雰囲気」だけで認めるかな。
 余談ですが、パトレイバーからゆうきまさみ漫画に入ったワダツミは、最初ヒロインである大戸島さんごを見た時、野明の高校時代かと思った。無論別人なのだが、その後特車二課の整備班に鳥坂先輩とあ〜る君が就職している様を見るにつけ、世界の繋がりを感じずにはいられなかったり。いや、これもお遊びネタなんだろうけど(笑)
 二作続けて殆ど同じデザインのヒロインを使った意図は何なのかしら。
あおぼうず
 非常に古い作品ではありますが、小さな頃から何度も繰り返し読んでおりましたため、今でも話や台詞を記憶しております。そしていつでもそばに置いてちょっと一息つきたい時に読む。と、主観入りまくりの感想で本当に申し訳ないですが、それだけ私にとっては思い入れの深い作品です。
 内容はと言いますと、光画部というリベラル極まり無い高校の部活動を舞台として、そこにエッセンスとして何を考えているのかわからないアンドロイドを放り込んでみたコメディです。主人公のあ〜る以外にも魅力的なキャラクターが多く、それぞれが個性的に動くため非常に混沌としつつも面白い作品です。

ゴルゴ31
 賑やかでありながら怠惰な生活を送る文化系の部活を描いた作品ということで「げんしけん」の先駆けである漫画っていうのが一番メジャーな紹介文でしょうね。トサカ先輩とかポジション的に斑目そっくりですし。
 作品のノリ的にはオタネタ作品と言えるのか微妙な所ではありますけど作品にあるどこかまったりした感じは昔の文化部の雰囲気がしていると思います。それに十八年前の作品だけにネタは古いですがパロディ要素も含まれてますしね。
 まあ愛知に住んでいる身としては「飯田線のバラード」は外せない所ですがアニメなので語れないよなあ(笑)

世良敬。
 既に三十路に突入しておるわたくしが小学生の頃の作品ということで、改めて読むと流石に少々古い。
 しかしながら、いわゆるヲタク文化を一般誌で展開したという意味では、現在の「げんしけん」等の礎となる作品といえます。むかしのヲタクは「面白いこと」を自ら無理やり見つけてきて馬鹿騒ぎしたもんだ、みたくな。今は、既に「面白いこと」がわざわざ探さなくても溢れかえってるから必要ないし。
 出会いは小学生の頃でした。光画部のような部活動に憧れました。そして実践しました。今はきっと現代視覚研究会に憧れる高校生が一杯いるんだろうなあ。とか考えるとやっぱりヲタク漫画にも歴史ありという感じがします。
 今回は一巻のみのレビューということで、少々「古さ」とか「歴史的意義」みたくなほうが先行してしまいますけれども、筆が乗ってくる続刊以降も本当に面白い作品です。機会があれば是非。

零黒
 主人公が、学ランアンドロイド(ロボットではないことにこだわる)新入生であることに始まり、文字通りネジが一本どころか何本も外れてるんじゃないかと思わせるわけのわからない言動と、それを取り巻くわけのわからない光画部員、他。
 とにかくずっとR・田中一郎のペースで流れるもったりとした空気と、漫画自体が古いこともあって、それこそ若い子には聞き覚えすらないキャラやギャグのパロディ。
 ゆうき氏の他作品と比べてもかなり異色だとは思うが、知る人ぞ知る迷作と言えるのでは。

月咬
 レビューのために相当久しぶりに読んでみましたが、懐かしさを通りこしてごくごく自然に読んでました。やっぱり自分にとってやはり原点とも言える作品です。
 昔の作品なので、ギャグそのものはやや古めとなってしまってますが、キャラクターの魅力と彼らが作り出す雰囲気は今でも楽しめます。
 しかし一巻の最大の見所は絵柄の変化かも(笑)一巻でこんなにも変わるものか……。

にゃろ
 文科系クラブでぬるーく楽しく日常を過ごしていた自分達にとって「あ〜る」は高校生活のバイブルだった。
 皆で回し読みをし、話題にし、無茶は承知で光画部っぽくはじけてみたりと。
 そんなわけで、今も読み返すと必然的に自らの高校生活に想いが飛んでしまう、そんな作品。
 個人的な思い入れを語ってしまったけど、この世代は同じように思っている人多いんじゃないだろうか。
 古い漫画をほとんど処分してしまった今も、あ〜るだけは手放せない。イメージアルバムがまた本当に傑作。

hidaka
 二十代後半から三十代の人間にとって、文科系部活動のお手本といえばこの作品というくらい人気を博した学園コメディ。R・田中一郎という非日常の存在を、極めて何も起こらない日常に叩き込んだ事によって生まれるズレた笑いと、作者であるゆうきまさみの持つ「昭和オタクのセンス」が、ハマると二度と戻れない『あ〜る』ワールドへと読者を誘います。
 この一巻はRくん登場編といった感じでまだまだ大人しいですが、今後巻が進むにつれ、光画部部員の面々やその他脇役キャラたちも個々の味を見せ始め、他には無いこの漫画独自の世界を形作って行きます。登場人物は皆、生き生きと作品内で暴れ回り、彼らの日常を謳歌する。読んでる僕らも、次第にその日常を心地良く感じて行く。
 連載当時小学生だった僕は、この作品に出会ってしまったがために部活動というモノに対し異常なまでの憧れを抱くようになってしまいました。というか、あの頃これ好きだった人は皆、光画部に憧れていたでしょうけど。
 不変の名作なので、まだ未読という方は是非。
 余談ですが、好みのタイプはRくんって女の子、多いよね。

"一般にいうところの写真部です"
 そんな注釈のいる光画部……写真撮ってるシーンがほとんどない気がするのはよそに置いとくとして。
 Rくん、一家に一台居ると便利なのかやっかいなのかわからないアンドロイドっぷりが最高です。
 正論を説いたかと思えばそれをブチ壊す緩急のテンポがいいので、気楽にだらだらと読んでいられますよ。

檸檬来夢
 この漫画は、私の青春であり、私の根本を構成する一つであるといっても過言ではないくらいに、私の中に根深く占めている。この漫画とであったから高校では、写真部に入り、同時に生徒会役員も務めたりした。おかげさまで楽しい高校生活を送ることが出来た。ゆうきまさみ先生に感謝したい。
 さて、一巻ではRが転校してきて生みの親である成原博士が登場するあたりまでが主な話である。序盤ということもあり、Rの正体がわかるまで、変な漫画でしかない。まぁ、この漫画、終始変な漫画であるのだが。キャラクターの立ち方も微妙で、傍若無人な鳥坂先輩以外は、しぃちゃんとさんごがちらほら出てくるくらいで、浅野と岸田に至っては、出てたっけ?と首をひねる始末。
 唯一の萌えどころはさんごによる下着姿は披露くらいだろうか?当時の少女っぽいというか飾り気のない下着姿がなかなか懐かしい感じを受ける。というか、漫画の舞台となってる時代が古いのだ。今の世代の人間にも読んでもらって、そういう時代もあったのだよと知ってもらいたいものである。

ワダツミ