■“フローラントオンライン”キャンペーン 第1回 チャプター1

 フローラントオンライン
 1997年9月24日21:00からサービスを開始する、パソコン用多人数参加型オンラインロールプレイングゲーム。
 世界のプレイヤーを一つの世界で繋ぐという夢の様なゲームに、多くのRPGファンがゲームスタートを待ち侘び、壮大な冒険を……そして、もう一つのウリでもある「冒険に出なくとも、商人や職人として遊ぶことも出来る」という自由度に、胸を高鳴らせていた。
 ある者は職場の飲みの誘いを断固として断り、ある者は親に頼み込んでテレホタイム前からのネット接続の許可を得ることに苦労し、ある者は帰宅するなり事前の世界情報がほとんど明かされておらず、初めて触れることになる世界の断片〈マニュアルに記載された極めて大まかな世界説明〉を貪るように読んで旅する自分のイメージを入念に思い描き、ある者は夜勤明けから即座に就寝して徹夜の準備を万端にし、ある者はこの日のために買ってきたパソコンのセットアップに苦戦しつつもどうにか勝利し、ある者は家事を完全に片付けて長期戦闘態勢を確立していた。

 そして……。

DM「君たちがキャラクターメイクを完了し『冒険をはじめてよろしいですか?』の確認で『はい』をクリックしたら、ぐにゃ〜んってなって気がつけば平原の小高い丘の上に立っていた」
人間男1「みんな同じ所に?」
DM「そう。なんかいる」
人間女3「得体のしれない人間が周りに(笑)」
DM「そうそう」
人間女3「コスプレイヤーかな?」
女の子「あら?」

全員「………………」

 暫く全員が無言に(笑)

DM「みんなジーっと黙って見つめ合ってるのか(笑)」
女の子「黙ってキョロキョロしてます」
人間男1「自分がゲームのマウスとか握ってるような感覚はなく、生身であるとはハッキリ認識出来てるんですか?」
人間女3「下を向いたら鎧着てる自分の体が見えるんだよね?(笑)」
DM「そうそうそうそう」
人間女1「遊び方が……あたし初めてなん。 みなさん教えて下さい……? え、どないするん?」
人間男1「こーいうゲームだと思ってるんだ(笑)」
女の子「それは日本語として聞こえるんですか?」
DM「日本語として聞こえます」
人間女1「みんな日本語喋ってるのか」
人間女3「まだ喋ってない人が大半だけど(笑)」
人間女2「あなたもひょっとして……ゲームを買った方ですか?」
人間女1「………………………………」
皆「…………………………」
人間女1「………………あたしなん!? 聞かれたのあたしなん!?」
DM「気の毒な娘かな?」
女の子「じゃあ、『ゲーム』って聞いてから、自分の身体とか装備を見始めます」
人間男2「とりあえずダガーを抜いて、(それを鏡にして)自分の顔を見てみる」
DM「そしたら、突然刃物を抜いた人がいる……ように、君たちには見えます(笑)」
人間男2「いやそれは(常識的に考えて)後ろ向くよね?(笑)」

 
 TRPGにおいて「わざわざ宣言しなくても常識的に考えて○○しているだろう」という思い込みと周囲のギャップは、「あるあるネタ」でもトップに君臨している人気コンテンツです(コンテンツ?
 例えばベテラン冒険者なのに食料・水・照明道具を忘れたり。「普通はそんな大事なもの忘れるわけないだろ」「忘れてたじゃん」「俺はプロじゃない!」って押し問答が、まだ子供のうちはマジ喧嘩に発展するわけです(笑)
 このさじ加減は中々に厄介な問題で、ともすれば「俺は高レベルキャラだからそんな初歩的なミスはしない。自動的に気付いているはず」に留まらず「高レベルな自分のキャラはこの状況ならなにが適切と考えますか?」といったことまで、様々に「キャラの熟練度に依存した行動」が取れてしまうのだ。そして確かに「一理ある」のが、厄介たる所以。釈然としない人にしてみれば、マジで釈然としないのだ。
 まぁ確かに俺もドラクエ8で「目の前で惨劇が起ころうとしているのに、ボーッと眺めてるだけの勇者」には「馬鹿じゃねーの!? このキャラってかこの演出考えた人間!! 止められるだろ! これは!!」となったものである。
 いやまぁ若干論点がずれてる気もするが!!
 なんにせよ、一事が万事「レベルに見合った失敗なんてしない」とか言い出してしまうと(俺の考える)ゲームにならないので、ケースバイケースで無慈悲だったり情状酌量したりしています。

DM「じゃあ皆には彼が背中を見せて、刃物を抜く音が聞こえました」
人間女2「怖っ(笑)」
人間女1「あはははははは(笑)」
人間男2「そして自分をちょっと刺してみます」
DM「そして自分を刺し始めた……と」
人間男2「いや(常識的に考えて)指先だよ!? 指先チクっと刺してみる」
DM「痛いね(笑)」
人間男2「痛いし血ぃ流れるね。あーじゃあ夢じゃなさそうだ、と思う」
人間女3「あなた達はいったい何者!?」
人間女1「いやーこれは夢やんなぁ…………夢や(笑)(空を仰ぎながら」
人間男1「ほんとに『夢かな……』って思うよね(笑)」
女の子「私はつい先程まで自宅でパソコンをしていたはずなのですけれど」
人間女1「うん、あたしもそう……」
女の子「あなた達も、同じような状況ですか?」
人間女2「どうやらそのようですね……」
人間女1「うん……うん!!
人間女3「ひょっとしてここは……ゲームの中!?(嬉)」
人間男2「ゲームの中……ってことはなさそうな感じですけどね。だって試してみたけど……痛いですよ」
人間女3「じゃあ異世界ねっ!!!(嬉)」

 
女の子「つかぬことをお聞きしますけど……皆さんから見て、私の背はどのくらいに見えますか?」
DM「思いっきり見上げてるからな(笑)(だがイラストはかなり誇張しております)」
女の子「うん。凄く高く見えるから(笑)(身長127センチ)」
人間女3「呪文の使い方は認識してますか?」
DM「頭の中で物理魔導の法則がハッキリ認識されてるわけではないけど、『もしかして呪文なんかも使えるのかしら?』って意識した瞬間、キュピーンって閃いて知識が湧き上がってくる感じだね」
人間女3「なるほど。じゃあ、ひょっとして……と言いながら」
DM「いや、その前に質問に答えてやったりはしないのか(笑)」
人間女3「キャラメイクの時の選択肢にあった、キゲインの娘だわ」
女の子「キゲイン……はい(笑)」

 独自世界なんでドワーフのことをキゲインと呼びます。地味に差異があるものの、まぁだいたい似てます。あ、女性はロリなタイプのドワーフです。異論は認めない。

女の子「今遊ぼうとしていたゲームで、私は確かにキゲインでキャラを作ったのですけれど」
人間女3「ここは1発……呪文を使います(笑)」
DM「お(笑)」
人間女3「グリッターダストを皆にかからないように発動します」
DM「じゃあ自然と詠唱や動作が思い浮かび……」
人間女3「使える……!」
DM「目の前に金粉ショーが(笑)」

 グリッターダストは、1辺10フィートの空間に輝く魔法の粉塵をばら撒き、透明な存在はペイントされて隠れられなくなり、さらに抵抗に失敗した人間を盲目状態にするのだ。

皆「…………………………」

 長い……長い沈黙ぢゃった……。
 おそらく皆、「どうリアクションするのが妥当なロールプレイなんだろうか?」と悩んでいたに違いない……。

女の子「そ、それは……?(笑)」
人間女3「魔法(笑) ……ファンタジーだわぁぁぁぁぁぁ!!!!」
人間男2「(完全にスルーして)僕の肌と瞳、何色しているかわかります?」
女の子「目は緑で……髪は銀かな?」
DM(微妙に受け応えてる箇所が違う(笑))
人間男2「普通の日本人の色になってま……」
人間女2「せんね」
人間男2「さっきダガーに反射させて見たら、褐色で銀髪の……」
DM「まぁ手は見えてるね(笑)」
人間男2「フル装備だから隠れてるんですよ」
DM「さっき指先をダガーで刺してた時に脱いでるんじゃない?」
人間男2「あ、そうか。脱いでる。脱いでるね(笑) ……じゃあやっぱり顔の色は違うんだ。だとすると、これゲームで設定した色なんですけど」
女の子「私も、ゲームで設定した武器と鎧を」
人間女2「確かにわたしも髪の毛が伸びてますね……」
人間女3「今の見たでしょ!? 魔法! 魔法よ!! 魔法が使える世界よここは!! そんな些細なことどうでもいいわっ!! ここは魔法が使える世界!!」
DM(大事なことなので2回言ってる!!)
人間男2「うーん(笑) じゃあどうしましょう」

 
人間女3「ゲームの中みたいなこーいう世界に来たんじゃない! よしっ!! イエスッ!!!」
人間男1「そう言われると、ゲームの中に入ったと思うしかないな……」
人間男2「ゲームの中なのか、ゲームの中を再現した世界に連れてこられたのか……」
人間女2「まぁこんなところで話していても埒が明きません。一度街にでも行ってみませんか?」
人間女3「街!?」
人間女2「それでハッキリするんじゃないですか?」
人間男2「どこ?」
人間女2「まぁとりあえずここから……そぉぉぉぉですねぇ……確かにどこなんでしょうかぁ(笑)」
人間女3「ここは野原?」
DM「そうだねぇ。見事に野っ原だねぇ」
人間男2「道らしきものは?」
DM「見えないねぇ」
人間男1「なにもないんだ(笑)」
人間女3「ここが何処だかわからないし、ここは何処だろうと思っても周りになにもないから判断が……」
DM「といったところで知識〈地理〉がある人は振ってください」
人間女3「16」
人間男2「19」
人間男1「20」
DM「じゃあ君(人間男1)は近くに村のようなものがある気がしてきた。朧気ながら方向もわかる気がする」
人間男1「ええとなんとなくなんですけど、この近くに集落があるように……なぜかはわからないけどなんとなく(笑)」
人間女2「どーいう根拠なんですかそれは」
人間男1「ね(笑)」
女の子「でも行ってみましょう。他にあてがあるわけでもありませんから」
人間女3「だって呪文が使えるのよ? 村の場所知ってたって何の不思議もないわ!」
人間女1「いやーこれ夢じゃないのかなぁ……(笑)」
人間女2「そうであって欲しいとは思いますけれど……」
人間男2「現状の認識がどうであれ、行ってみますか」
人間男1「夢の中だとしても、なにかしら行動しないといけないな」
人間女3「まぁ一緒に行動するにしても、私達名前も知らないわ。自己紹介しましょう!」
人間男2「……どっちだろう(笑)」
人間女3「私は世界のすべてを識る魔法使い(を目指してる)ソフィー!!」
人間女2「え、日本人じゃなかったんですか?」
ソフィー「ソフィー!!」
人間女2「え〜……ええ〜……ハイ(笑)」
ソフィー「バーンの帝都ソルから来たわ!!」
DM「来たんだ(笑)」
女の子「来たんだ……ソルから来たんだ(笑)」
人間男2「みんなゲームの話だと知ってるのに……ね?(笑)」
女の子「でもソルから来たんだ(笑)」
ソフィー「ドヤァ!!」
人間女1「あたしはルーインズと同じ国にするわ♪」
DM「じゃ、バーンだね」
人間女1「じゃあバーンで!」

 
 ルーインズとは、バーン帝国の子爵で、近衛騎士団長にして皇帝家の剣術師範です。
 大陸最強を謳われる剣士なので、知名度も抜群。
 ……なのだが、別に人間女1(仮名)が彼を知っているわけではなく、彼女のプレイヤーが以前このキャラと(別のゲームで)一緒に冒険したことがあるだけである(笑)
 ところで画像だと美女とロリはべらせて悪い顔してるスゲー嫌な感じのキャラなんですが、取り敢えず悪人ではないよ!
 あと左は正室(冒険者時代の仲間)で右が側室(リッチが滅ぼした村の孤児を保護した)ですが、どっちも外見年齢若いまま系種族なんで、左が100歳超、右でも30過ぎてます。いやまぁ右のは老けない種族にしてもかなりロリなままで成長止まってますが。

 そして割と紛らわしいので一応念の為に書いてこう。

 プレイヤー:この場合、実際に卓に座ってロールプレイしたりサイコロ振ったりしている人。
 キャラクター:フローラント世界で動いているPC。
 中の人:ネットゲームを始めたつもりがなんかおかしなことになってる、パソコンの前にいた筈の人。

女の子「タマと申します。キゲインの国デアストッカから来ました……取り敢えず合わせた(笑)」
ソフィー「よろしく!」
人間女1「タマちゃんよろしく!!」
タマ「タマちゃんだなんてそんな……」
人間女1「せやかて。タマちゃん可愛いんよねぇ(撫で撫で)」
人間男2「まぁみんな中の人の年齢知らないしね(笑)」
人間女1「タマちゃーんちんまいなーっ(撫で撫で)」
タマ「まんざらでもない気分に(笑)」
人間男2「じゃあ僕。ゲームの設定では『ルト・リリエンタール』という設定にしました。出身はヴィーリオンということになっています」
タマ「その時タマは気付いた! 眼鏡をかけていなくてもハッキリと前が見えることに!!」
ルト「一応レンジャー(聖衛士)でキャラメイクしました。どうやらレンジャーっぽいです」
ソフィー「(なにコイツ……シラケるわぁ)って顔で見てます(笑)」
皆「(笑)」
ルト「現状を認識しないと!!(笑)」
DM「空気読めって感じで見られてるわけね(笑)」
ソフィー「……まぁいいわ!」
人間女2「上から目線だっ(笑)」
DM「俺の脳内イメージがそれ町の歩鳥と森秋先生で展開されてるんだけど(笑)」
 
人間男1「俺はレンっていう名前で、ナイト(騎士)になったはずです。ヴィーリオンの出身で……」
ソフィー「ヴィーリオンの何処出身!?(さらっ)」
レン「……………………後で考えます(笑)」
皆「(笑)」
タマ「前情報を調べて創りこんでるかどうかで差が出ている(笑)」
ルト「ということは、ヴィーリオンの街の知識はもうあるってこと? 君は?」
DM「知識技能相応に知ってるっていうか、必要に迫られれば思い浮かぶ気がします(笑)」
ルト「じゃあ僕もそんな感じで知ってたりするのか」

 この辺は「普通のTRPG」だったとしても、プレイヤーは知らないことをサイコロの出目次第で「前から知ってたかのように振る舞うロールプレイをする」わけだから、実は大差ない処理だったりします(笑)

人間女2「どうやらわたしの番のようですね……。私の名前は一応ヴィントミューレです」
ソフィー「イチオーヴィントミューレ……」
人間女1「イチオーヴィントミューレさん……」
ヴィントミューレ「敢・え・て、職業は秘密としておきます(キリッ」
 
ソフィー(忍者だ)
ルト(忍者だ)
人間女1(忍者や)
タマ(忍者だ)
レン(忍者だ)
ソフィー「そう!」
タマ「忍んでらっしゃるのね」
ヴィントミューレ「え、ナンノコトデスカ」
 
人間女1「日向凛夏(ひゅうがりか)申します! リッカと呼んでください!! よろしくお願いします!!」
皆「(笑)」
DM「1人だけ本名言い出したっ(笑)」
リッカ「うん! えと! 勇者です!!」
皆「おお〜(拍手)」
リッカ「以上です!♪」
ソフィー「よろしく。勇者と一緒に旅ができて光栄だわ」
リッカ「うん!(固い握手)」
DM「卓の左半分側プレイヤーとの温度差が凄いな(笑)」
ルト「どうしようかな、と考えてる(笑)」
DM「演ずるキャラクターが大人ゆえに勢いに流されまいとする悲しき理性が働いてしまっている(笑) 右半分のエンジョイ派と違う」
ヴィントミューレ「こっちは楽しんでます!!(ビッ)」
DM「ガチ勢とエンジョイ勢の温度差(笑)」
リッカ「あはは(笑)」
DM「漂流教室でも、教師たちは大人の常識に囚われてるから、悲惨な現実を受け止めきれずに精神崩壊してたからな(笑)」
ソフィー「じゃあその村とやらに行ってみましょう」
レン「そうだな。自己紹介も終わったことだし行ってみよう」

 リッカ フェイヴァード・ソウル3
 レン ナイト3
 ルト レンジャー3
 タマ クレリック2/マーシャル1
 ヴィントミューレ ニンジャ3
 ソフィー ウィザード3

 ちなみに自己紹介でなにも言ってないもんだから、タマのクラスを皆知らない(笑)
 クラシックD&Dみたいに「クラスがドワーフ」って感じで納得されてるのかもしれない(えー

 そんなわけで、以前ポシャった委員長キャンペーンのネタをさらに拡大して、いまナウなヤングにバカウケという異世界物とネトゲ物に乗っかる姿勢を見せた新規キャンペーンだよ!! 続く!!
■“フローラントオンライン”キャンペーン 第1回 チャプター2

 近くにあるらしい村へ向かう一行。

DM「というわけで歩きながらなにをするか、です」
ルト「自然の様子を観察してみる。植生とか」
DM「ではみなさん、知識〈自然〉を振ってください」
ルト「13」
ソフィー「19」
レン「22」
ルト「レンジャー泣けるな(笑)」
タマ「18」
DM「レンジャーが最低じゃん(笑) 取り敢えずぱっと見で『これは異世界だわ』って違和感はない。キッチリ調べれば微生物とか違うかもしれないけど」
ソフィー「あ、リアルでは季節いつ頃でしたか?」
DM「9/24でした」
ヴィントミューレ「で、こっちの世界ではどのくらいですか? 暖かいとか寒いとか」
DM「日本よりもかなり寒いです」
ソフィー「太陽の色が違ったりはしませんよね(笑)」
DM「ぱっと見違いはないね」
ソフィー「2つあったりはしないわよね(笑)」
タマ「いったい何処へ来てしまったのかしらねぇ……」
DM「遠くを飛んでる鳥とかも距離があってよくわからない」
レン「聞いたことのない鳥の声とかは」
DM「単に自分が知らない地球にも住んでる鳥の声かもしれない」
ソフィー「まぁヨーロッパ行けば知らない鳥もいるわよね」
レン「じゃあ気候がヨーロッパっぽいなぁって思いながら歩いてます」

 ちなみに重装鎧着てる人間がいるパーティーの徒歩行軍速度は時速2マイル(3.2キロ)です。
 イスカンダルのマケドニア軍が1日15マイルだったそうだけど、何時間歩いてたかはよく知らぬ。なんにせよ少人数のグループと比べて遜色が無いほどのスピードで軍勢を行軍させてたんだから、凄まじい速さ。なんせ十字軍なんて1日5マイルくらいだ

ソフィー「……重くない?(タマを見ながら)」
タマ「これだけの荷物を持って歩くなんて何十年ぶりかしらね」
ヴィントミューレ「な、何十年?」
ソフィー「のどかねぇ」
ヴィントミューレ「そうですねぇ」
ソフィー「ドラゴンでも出ないかしらねぇ(笑)」
DM「まだドラゴンを舐めてられる時だからな(笑)」
ヴィントミューレ「初期レベルでドラゴンは流石に厳しいと思いますけど!?」
ソフィー「いや、見てみたいのよ! 楽しそうじゃない! せっかくこんな世界に来たんだから!!」
ルト「僕達の他にもこんな風になってる人はいるんだろうか?」
ヴィントミューレ「いるかもしれません……けどわかりませんね。私達だけが特別なのかも知れませんし」
リッカ「特別!?♪」
タマ「反応した(笑)」
リッカ「特別! 夢や、あらへん!?」
ヴィントミューレ「なんか凄く喜んでる人が1人(笑)」
リッカ「あれ? もしかしてあたしら、選ばれちゃったん?♪」
ヴィントミューレ「たんですかねぇ」
リッカ「夢ちゃう!?」
ルト「当たりくじか外れくじかはわからないけど」
リッカ「当たりや! あたしら、選ばれたんやし!!」
ソフィー「そうね! それは間違いないわね!」
リッカ「やったで!! やったやんな!?」
ソフィー「ね!!」
リッカ「魔法使えてるんよね!?」
ソフィー「そうね! 勇者だったら何か魔法を使って見せてよ!」
リッカ「あ、勇者も魔法使えるで!! 任し!! えーとな……ライトいこ! なに光らすん!?」
ソフィー「なんでも光らせられるわよ。割と(笑)」
リッカ「ほなぁ……せや、ハルバードにライトぉっ!!」
DM「じゃあ先っちょが光ったね(笑)」
ソフィー「地味ね(笑)」
ルト「おお、電飾とかじゃないのか」
リッカ「ほらああああ! 凄いでえええ! ライトやあああ!」
ヴィントミューレ「ライトってこーいう(ハルバードの先端を光らせる)魔法なんですか?」
 
ルト「凄いな。どっかにスイッチとか付いてるのではなくて?」
リッカ「無いっ! 無いっ! せやけど地味!(笑)」
ソフィー「まぁ地味だけど……それはそれとして、認めなさいよ現実を(ルトの肩をポンポン)」
タマ「その魔法だったら私も使えたはずです……と、グレイヴの先端にパッと」
ルト「ついたついた」
リッカ「ゆ、勇者が……勇者の特別感が……(ガクリ」
タマ「あらごめんなさい(笑)」
リッカ「あれぇ?」
DM「ちなみにゲームのマニュアル読み込み組だったソフィーは気づきます。そもそもこのゲームに勇者なんてクラスあったか?と(笑)」
リッカ「フェイヴァード・ソウル(神寵者)の説明を読んで『神に愛された者』って書いてあったから、これは勇者やと思ってます(笑)」
ソフィー「神官戦士風で勇者って言ってるから、フェイヴァード・ソウルだと察してますが水は差しません(笑)」
DM「突っ込まない優しさ(笑)」

 しかしその条件ならパラディンも十分に満たしている気がしないでもない(笑)

ソフィー「ノリノリなんだからそれでいいわ(笑)」
DM「キャンペーンのタイトルが『日向凛夏は勇者である』ってなったら不吉だなぁ。段々と身体の機能失ってく(笑)」
ソフィー「リッカの勇者でも」
DM「それ延々と内輪もめしてる話に……赤き森に!!」
タマ「そうですねぇ。極めて快適ですよ。どれだけ歩いても膝は痛くならないし。目はハッキリ見えるし。音も聞こえるし」
DM「完全にスルーしてたと思った質問への解答が唐突に(笑)」
ヴィントミューレ「あの言ってることが随分と歳……いやなんでもないです」
ソフィー「タマさんお幾つ?」
ヴィントミューレ「ストレートに!?」
タマ「33歳と設定しました」

 前にも書いたとおり、キゲイン(ドワーフ)の女性はロリ種族なので!!

リッカ「タマちゃん(30過ぎてるように)見えへんな〜!! わっかいな!!」
タマ「あらやだ♪」
DM「ゲーム内での種族特性わかってない人の発言だな(笑)」
ソフィー「彼女の種族の年齢を人間に換算すると16,7くらいよ」
リッカ「そなんや! ほな、あたしと同じくらいやな!」
タマ「あらあらうふふ」
リッカ「オホホホ!!」
ヴィントミューレ(あーこの人たち私よりも歳下なんだなぁ……)
リッカ「それにしても、なんであたしらが選ばれたんやろねぇ〜(嬉)」
ルト「これが例えば現実の世界からそのまま飛ばされてきたのだとして、じゃあモニターの前にいた僕たちはどうなったんでしょうね」
ヴィントミューレ「そうですね。身体は確かにここにあります」
ルト「でも違う」
タマ「明らかに違う身体です」
ルト「あ、っと思い、靴を脱いで足の指を確認する」
DM「すると、君は自分の足の指がちゃんとあることに気付く」
ルト「ある!」
ヴィントミューレ「……なにをやってるんです?」
ルト「ああ、僕昔登山で足の指を4本ほど失くしてるんですよ。それが今全部ある!」
ヴィントミューレ「4本も指を失くすって……」
ルト「まぁ山登りではよくあることですよ」
ヴィントミューレ「そんなものなんですか……」
ソフィー「まぁ考えててもしょうがないわ」
ヴィントミューレ「あなたは少し考えなさ過ぎます」
ソフィー「ここにいるのが現実なんだし!」
リッカ「うんうんうん♪」
 
タマ「冬の満州も寒くてねぇ〜」
ヴィントミューレ「まんしゅう……?」
ルト「ああ、夏でも朝は寒いと祖父に聞きました」
ヴィントミューレ「山なのかなぁ……。兄様は大丈夫かしら?」
ソフィー「お兄さんも一緒にこのゲームを?」
ヴィントミューレ「いえ、兄はまだ」
ソフィー「それなら大丈夫じゃない?」
ヴィントミューレ「いえ、わたしがいないとあの人は……」
DM「個人の見識に偏った情報です(笑) まぁヴィントミューレにしてみたら、猪突猛進で世話の焼ける面倒くさい兄だからね」
ヴィントミューレ「そうです。あの人はわたしがいないとどうしようもないですからまったく」

 まぁうん。兄がいるみたいですね!!
 これが伏線になるのかどうなるのかはプレイヤーもDMも知りません!! 続く!!
■“フローラントオンライン”キャンペーン 第1回 チャプター3

 てくてく歩くよ冒険者。

ルト「今は何時くらいかわかるんですかね?」
DM「ゲームにログインした時間は夜の9時だったね。で、現在の光景は真っ昼間」
ルト「あー。じゃあヨーロッパの真ん中あたりとの時差とピッタリ合う感じですね。みんな、どうやら時差的にも気候的にもヨーロッパくらいな感じがするんですけど、どうでしょう?」
リッカ「ここ、地球なん……?」
ソフィー「反証しなきゃ……ヨーロッパだなんて認めないっ!(笑)」
リッカ「え、ほな帰るときは飛行機……? 船?」
ルト「取り敢えず日本じゃないっぽいんで、言葉が通じるかどうか……」
リッカ「ログアウト……とかするん?」
ヴィントミューレ「コマンドなんか出ませんわねぇ」
リッカ「え、出んの? 魔法でどうにかなるん?」
 
ヴィントミューレ「そーいう魔法なんてありませんわ」
ソフィー「現実にリセットボタンなんて無いのよ!」
DM「ちなみにウィザードリィのTRPGには『リセツト』って呪文あったからね。戦闘前に時間巻き戻す効果の(笑)」
皆「(笑)」
リッカ「ま、帰らんでもええかぁ♪」
ルト「とりあえず英語で話しかけるけれど、通じないことは覚悟して行きましょうか。幸い僕は喋れます」
リッカ「おお〜た〜の〜も〜し〜(ぱちぱち)」
DM「というわけでレンはもう一度知識〈地理〉を振ってください」
レン「ダイス目いいなぁ」
DM「じゃあまたキュピーンってなって、自分たちはどうもバーンとヴィーリオンという国の国境線付近のバーン側を歩いてて、さっき村のようなものと思ったのが、バーンの国境要塞だということが判明した」
レン「え!? ……というわけでバーン帝国とヴィーリオンのヴィーリオンの国境にある要塞に向かってるみたいなんだけど……割と危険?」
DM「危険かどうかは知識〈貴族〉判定を皆でしようか」
レン「低い。10」
ソフィー「24!」
ルト「22!」
DM「じゃあこの2つの国が絶望的に仲悪いことは3人とも知っています。そしてルトとソフィーは『仮に国境線でとっ捕まったりした場合、どちらの国の人間として振る舞うかがとても重要なんじゃないか』と思いました。つまりまぁ何者だと問われた時に、『異世界からやって来ました』と言う選択肢もあるし、身分を詐称して事なきを得る選択肢もあるし、要塞なんて捕まりそうな場所に近付かないという選択肢もあるわけですよ。とにかく国境地帯をフラフラ歩いてる集団は、イザという時のために口裏を合わせておく算段をしておくのは大事なんじゃないかと思いました」
ソフィー「レン、今向かっている要塞はどっちの国の?」
レン「バーン帝国の要塞です」
ソフィー「レンはヴィーリオン貴族よね?(笑)」
レン「そうだよね? あれおかしいな(笑)」
DM「ちなみにヴィーリオン貴族であることの証を立てられそうなものは一切無い感じです」
ソフィー「ああ、鎧に紋章が描いてあったりはしないのね」
DM「うん。だからルトやレンの家がヴィーリオン国内のどこかに実在しているのかどうかもわからない」
ソフィー「なるほどー」
DM「君たちのキャラに『前歴』があるかどうかは現状一切不明なのだね。突然出現してて、知り合いなんて誰1人いないかもしれない」
ルト「国境内部のどの辺歩いてるんですか」
DM「国境の川のすぐ近くを歩いてるみたいなんで、越えようと思えば簡単に超えられそうではある。パッと見」
ソフィー「街道でもなく平原を」
DM「そう。軍の行軍ルートとは思えない感じ」
ルト「捜しに来なければ見つからない、みたいな」
DM「そんな感じ。これが国境線のモロな場所にいれば話は変わるかもしれないが、そこまでギリギリ近付いているわけではない」
タマ「このままなにも考えずに砦に向かうのは、危ないかもしれませんねぇ……」
ルト「だけど周りに人がいそうなところも無いわけだよね?」
ソフィー「そうね、アテはないけど……」
レン「ちなみにさっきざっと自分の荷物を確認した時、5日分の保存食は持っていた。他の方は?」
リッカ「買い忘れた(笑)」
DM「知識〈地域〉を振ってみよう……じゃあレンは、国境越えの定番ルートがここから西にある山の中にあることを知っている」
レン「このまま山に入って国境を超えるのが定番ルートらしいですよ」
ルト「そうすればヴィーリオン側に行けるというわけですね」
ヴィントミューレ「あの、それで国境を超える意味が今あるんですか?」
レン「そう。そこなんだよね」
DM「マスター的には、冒険の舞台をバーンにするかヴィーリオンにするかの選択の自由を与えています(笑)」
ソフィー「やっぱりそうなのね(笑)」
ヴィントミューレ「そもそもヴィーリオンとかバーンとかいうのは、ゲームに出てくる地名ですよね?」
レン「ですね」
リッカ「詳しいなぁ♪」
ヴィントミューレ「それをなぜ貴方が知っているんですか?」
DM「ヴィントミューレは、キャラメイク時に知識技能に微塵もポイント振らなかったことを思い出すかもしれない(笑)」
ヴィントミューレ「全然わからないわ!(笑)」
DM「そしてさっきから知識判定で大活躍のナイトさん。さすが知識階級だぜ!!」

 ナイトはクラスの得意技能以外の知識技能にも、割と頑張ってポイント振ってます。
 知識判定は1ランクでもあればとにかくD20振れるんで、0と1では大違いなんですね。

ヴィントミューレ「知識系クラスでもないのに物知りで立派だなぁ〜と思います(笑)」
ソフィー「貴族が知識豊富なのは不思議なことなのかしら(笑)」
DM「てわけで今も普通に戦争中の国家の国境線にいることがわかります」
ソフィー「これはどっちに見つかっても危なそうね(笑)」
タマ「まだヴィーリオンに見つかる分には、レンさんやルトさんがヴィーリオンの騎士なのですから顔が利く可能性が高いですよね?」
DM「でもレンもルトもキャラメイクの時に確かに貴族設定にはしたが、その事実以外の知識は一切ありません。でも皆には貴族のコネパワーありそうに思われてるみたいです(笑)」
ルト「知らない! 自分の領地が何処にあるかも知らない!(笑)」
タマ「でも少なくとも、敢えて敵国の方に行くことは……」
ルト「僕の考えを言ってよろしいでしょうか? 最初のマニュアルを読んだ限りでは、バーンのさらに北の方に、凄く知識が集積されてる国があるって読んだんですけれど」
ソフィー「ファクセリオンね!」
ヴィントミューレ「ヒノワですか?」
DM「ヒノワではない。それは東だ(笑)」
ルト「そのファクセリオンはバーンの向こう側だったと思うんですよ。現状不思議な現象の情報を集めるなら、そういった知識がありそうな場所を目指すのが妥当じゃないでしょうか?」
ソフィー「ファクセリオン! 魔導都市! 知識の宝庫! 行きましょう決定!! 賛成!!」
ルト「向かうならば、まずはバーン側」
ヴィントミューレ「そうですね。それがいいかも知れませんね」
DM「では知識〈歴史〉を振りましょう」
リッカ「えと、今何年ですか?」
DM「解放歴? 知らない(笑)」
リッカ「知らないのか〜」
レン「ソフィーと2人して1振りました(笑)」
DM「じゃあダメです。知識〈貴族〉ある人は二次知識ロール振ってください」

 うちのルールの場合、例えば「織田信長」に対する知識ロールを振る場合、そりゃまぁ当然ながら「歴史」で振ることになるんだけど、信長は貴族でもあるわけで。そして「貴族」は「○○家の○代目当主は○○」なんてことを知っているわけだから、どっちでも振れるんだね。ただあくまで「歴史」がメインなんで、同じ達成値の場合は歴史で振ってる場合のほうが情報量は多く正確になる。
 まぁなんにせよなるべく多く判定のチャンスを与えて、「なにも情報を得られなかった」なんてことが減るようにしたいゆえのシステムでした。

DM「じゃあソフィーとルトは『この世界、自称貴族なんていっぱいいる』ことを知っている。そして世間一般的に『身分を詐称する自称騎士』なんて珍しくないことも知っている。映画の『ロック・ユー!』でも最初は偽の騎士だったのが、武勲を立てて最終的には本物の騎士になってたね」
ルト「……てことは、何処へ行ってもなんとかなるかも知れない」
DM「偽の貴族証明書を作ってたからね(笑)」
ソフィー「2人はコネとかあるの?」
ルト「………………なにに?(笑)」
ソフィー「バーンに(笑)」
リッカ「え、バーンに知り合いおるん?」
ソフィー「知り合いとかコネとかツテとか」
レン「少なくともバーンにコネは無いような……気が……する(笑)」
ルト「東京の大学の教授で良かったら」
ヴィントミューレ「バーンに東京の大学の教授も飛ばされてきてたらいいですね」
DM「まぁ、無いですね心当たりは(笑)」
ルト「無いよね(笑) まだこの世界の現状も把握しきれてないし」
ソフィー「だよね(笑)」
ルト「でも一番近いのがバーン側の砦だというのなら、一旦そこに行ってみて様子伺うくらいしかないんじゃないですかね?」
タマ「仮にバーンの砦を目指すとしたら、お2人はヴィーリオン出身という設定なのですから、なにを聞かれてもいいようにきちんと私達の間で口裏を合わせておくべきだと思います」
レン「確かに」
タマ「敵国の砦に行くというのは、そんなに簡単に考えないほうがいいと思います」
ルト「夜を迎えるとヤバいんですよねきっと(笑)」
DM「それは知らない(笑) 常識的に考えればヤバそうだけど」
ソフィー「まぁ野宿はしたくないし、街に行ってみたいのよね。もう野原は飽きたっ!(笑)」
ルト「人から話を聞いて情報を収集しないことには」
リッカ「そもそも人がおるかもわからへんよねぇ〜」
ヴィントミューレ「さらに言えば言葉が通じるかもわからないですね」
リッカ「きゃあ大変や♪」
 
タマ「とにかく砦に行けば話を聞かれるのですから、なんであれきちんと説明できるようにしておきましょう」
リッカ「タマちゃん、エライこと言うんやねぇ〜こんなにちんまいのにっ! 頭のええ子っ!」
タマ「あらそうかしら?」
リッカ「小学生くらいの身長の娘がこんなこと言っちゃうんだぜっ!」
ソフィー「凄い大荷物持ってるし(笑)」
レン「口裏を合わせるとして、どういう設定にするのがいいと思う?」
タマ「何故砦に現れたのか。我々どういう集団なのか……」
ソフィー「勇者とその一行じゃダメかしら?(笑)」
ヴィントミューレ「明らかに捕まりますね!」

 実はこの世界ではフェイヴァード・ソウルはとても有難く権威のある存在なので、そんな悪くない手だったりもするが、それに知識〈宗教〉持ちが気付けるかどうかは次回の判定ロール次第かもしれない! なんにせよ第1回はこれにて終了! 第2回へ続く!!