■“タービュランス”キャンペーン 第5回(パーティーレベル10)

 今日も今日とて地竜の住処を襲撃。

 
 攻撃特化スタイルの反動ゆえに一度の戦闘でウィザードが余力を残したまま回復呪文が枯渇する為、行ったり来たりを繰り返す冒険者達。
 今度はゲージの先でクレイゴーレムがお出迎え。
 こいつの攻撃は特殊で、強力な呪いの傷を与えます。なんと術者レベル+D20で26を出さないと、その傷は回復不可能。クレリックの術者レベルは8の為、ダイスで18を出さないといけないというハードルの高さ。ハッキリ言ってこれまでの「攻撃は最大の防御スタイル」では間違いなく勝てない相手でした。
 だがしかし!
 昨今の「攻撃特化モード」がもたらす絶望的なまでの消耗ぶりに教訓を得、防御手段を丁寧に整えて戦うように方針転換していたのだ。それゆえに回復呪文に頼らず撃破に成功。
クレリック「なんという厄介な呪いじゃ」
ウィザード「正直、これまでの戦い方だったら絶対に殴り殺されていたわね……」
 とりあえず二日分の呪文をすべて回復に注ぎ込めば、どうにか何発かが呪いを突破して回復することでリカバリーは可能であったものの……なんせこのパーティー、金が無い。クレイゴーレムの残骸は売れば金になる。ゆえに換金せねばならない。というわけで往復一週間かけて売却→色々補充。

 
 今度はメイスファイターにダークビジョンとサイレンスとインビジビリティスフィアーをかけ、リデュースパーソンで小型化した仲間四人が四肢にしがみ付いて灯火管制を敷きつつ投石ゲージをフライパス、という荒技を用いつつ奥へ到達した冒険者達(もう門番はいなかった)。
 そのまま奥に低空飛行で進んでいくと、突き当たりになんか石像が。近付いて見てみるも知識ロールを振れないので詳しいことはわからない。ウィザードにお伺いを立てたいところだが、明かりはつけてないしサイレンス下だしでまったく意志疎通できない。仕方無いのでいったん戻ろうとすると……なんか帰り道が崩れさって埋まっている。
DM「サイレンスかかって飛んでたから、背後で盛大な轟音と地響きが起きてるのに気が付けなかったね」
メイスファイター「しゃ、洒落になんねぇ事態だ!」
 途方にくれるメイスファイター。仕方無いので仲間の視界確保の為に陽光棒で明かりを付ける。
DM「うむ。明るくなった。すると明かりが付いたラウンドに……ここまで敵が移動してきた。サイレンス下なので足音は一切聞こえなかったよ」
メイスファイター「クソッタレ! なんかヤバいチキンが近付いて来てんぞ!(昔戦ったことがある)」
DM「全員イニシアチヴどうぞ。そっちは聴覚喪失状態だから、−4ね」
 敵の出現に色々と相談したいのだが、なんせサイレンス下。プレイヤー間でもジェスチャー以外での意志疎通は禁止なのだ(笑)
DM「では一番速いコカトリスが一気に距離を詰めて群がります(右写真)。で、君達の今の状況は……四肢に小型化(身長半分)した仲間がそれぞれしがみ付いてるのは、重量的にはともかく身のこなし的に過積載もいいところなんで、事実上無防備状態ということでOKだね?」
 これはルール上、一マスに存在することが許される限界を越えている押し込み方なのだ(笑)
メイスファイター「チキショウ! 呪文をケチって命取りになりつつあるぜ!!」
DM「無防備状態なんで、いくらコカトリスが弱いといっても当たる当たる。さぁ石化への頑健セーヴだ」
メイスファイター「こんな間抜けな状況で石になんてなってられっか! 意地でも耐える!」
 どうにか耐えたものの、とにかく状況が絶望的。なにせ完全に追い詰められており、仲間が降りられる場所がない。しかたないので……。
メイスファイター「黙って死ぬわけにはいかねぇ! 俺にしがみ付いてる奴らを振り落とすぞ!」
DM「んでは周囲のマスにランダムで落ちる。モンスターのマスに振り落とされるんで、機会攻撃。まぁダメージは非常に低いから怖いのは石化だけだね」
ウィザード「その石化を喰らうと詰んじゃうんで、AP使ってセーヴをテイク10……」
クレリック「ディメンションドアで離脱しようにもサイレンス下だから詠唱が不可能!」
ローグ「サイレンスをかけておいた首飾りを遠くへ投げ捨てる!」
 しかしダイスは無情だった。あまりにも低いダイス目に窮屈ゆえのペナルティを受けた投球はすっぽ抜けて……写真の赤カウンター部分に落下。
ウィザード「終わった……」
クレリック「もうダメだ………………あれ? サイレンスって自分で解除できないっけ?」
 というわけで、ストーンゴーレムにボコボコにされながらもディメンションドアの呪文で脱出に成功するのであった。


ウィザード「大変な目に遭ったけど、呪文自体は大して消耗してないわ。もう一度行きましょう」
メイスファイター「あの落盤をどうにかしないとなぁ。スコップはあったよなぁ?」
 今度はゲージで敵の迎撃を受けないだろうと、歩いて堂々と接近することに。ローグを先頭にして進まんとする。
ローグ「捜索しながら進むのは時間がかかるんで……」
ウィザード「時間節約のために、この前落ちた穴のところまでは普通に進みます」
メイスファイター「といっても具体的に何フィート位だったか忘れちまってるわけだが」
クレリック「どのくらいじゃったかのう」
ウィザード「とりあえず60フィート地点まで進んでみましょう」
DM「じゃあ30フィート地点で落とし穴だ。先頭の四人、反応セーヴ」
ウィザード「そんな近かったっけ!?」
DM「君がディメンションドアで入口に逃げた時、一回の移動で追い付かれる程度の距離しか無かっただろう(笑)」
ウィザード「ああ、そうだ……」
ローグ「ああ!」
メイスファイター「入ってすぐのところにあったんだよ!!」
DM「メイスファイターだけ落ちたね。まぁこの前同様油まみれになる程度で、落下のダメージも些細なものだよ」
メイスファイター「クソッ! 油まみれで臭ぇ! とっととあいつら殺して売り捌いて服を買う金にしてやろう! さぁ進もうぜ!」
ウィザード「進んで……ここまで着くわけですね?」(終着地点のセットを指差しながら)

 
DM「いや、落ちるよまた。今度は70フィート地点で」
全員(吹き出したり苦笑いしたり唖然としたり)
ウィザード「そうだよ! もう穴が無いとは誰も言ってない!(帰りはいつもフライで飛んでいた)」
ローグ「要塞だもんな……」
DM「落ちた先は酸のプールなんで、全ての装備品に酸で17ダメージ……」
メイスファイター「ブッ! 酸!?」
DM「そりゃあアースドラゴンの洞窟だからなぁ」(酸は地の領分)
クレリック「ああ……それはたしかに納得じゃ……」
 結果、酸のプールで溺れてる間に頑丈な武器防具以外の全てを溶かされるのであった。
ウィザード「死者が二人くらい出たのと同じ程度の損害額が……」
DM「メイスファイターがまた主役に……」
メイスファイター「すいません、誰か服を下さい。下だけでもいいんで……」
DM「ぼろんぶらーんぶらーん」
メイスファイター「この禁断の背徳感が!」
ウィザード「とりあえず引き上げないと」
DM「水泳判定。タワーシールドを捨てないと絶望的だけど」
メイスファイター「それはできない!(さっき買ったばかりの魔法の品)」
DM「ガミラス星に……(爆笑しながら)」
ローグ「メイスファイタァァァァァ!!」
DM「メイスファイターは死んでも盾を放しませんでした……」
メイスファイター「死んでも放さん!」
クレリック「自分とメイスファイターにマス・レジスト・エナジーをかけて、フライを唱えて降りよう。そして沈んだメイスファイターにもフライをかけて脱出する!」
ウィザード「酸ダメージを完全に防げるわけじゃないから、ハバサック(魔法の背負い袋)は置いていって!」
クレリック「そうだった! 危ない!」
DM「で、ハバサックは置いて飛び込んだ。するとベルトポーチに入っているスクロールは水に弱いんで……」
クレリック「あああ……そっちもあったのを忘れていた……」

 どうにかメイスファイターの引き上げに成功するも、場を支配するのは「やっちまった……」という打ちひしがれ途方に暮れる空気。

ウィザード「プレイヤーレベルの油断でやらかした……マスターがカレーなんて食べてるから集中力が!」
DM「それが悪いの!?」
ローグ「そうきたか(笑)」


 とにかくメイスファイターが半裸ファイターに強制クラスチェンジを余儀なくされた為、再装備に戻らざるをえないパーティー。ガントレッツ・オヴ・オーガパワー、リング・オヴ・プロテクション、アミュレット・オヴ・ナチュラルアーマー、クローク・オヴ・レジスタンスといったマジックアイテムを筆頭に金銭的損害は莫大であった。
 しかし泣いてばかりもいられないので「とにかくあのストーンゴーレムを倒せば売って金にできる!」と希望に向かってダッシュするのであった。

 
 真っ向勝負すればなんのことはないコカトリスを蹴散らし、ストーンゴーレムに相対。
 例によって防御を固めている為、優勢に真っ向殴り合いを展開する前衛達。しかしローグはダメージ減少を持ちスニークアタックも載らないと相性最悪な為、手持ちぶさたであった。
ウィザード「どうせなら軽業で反対側に抜けて挟撃ボーナスを戦士に提供してみたらどう?」
ローグ「よし……やるぞ!」
DM「んじゃ目標値25の軽業カモーン……ってダイス目3? そりゃ迎撃対空だ。機会攻撃炸裂で19ダメージ」
ウィザード「でももう機会攻撃できない筈だから、殴られない!」
DM「ダイス目がまた3……失敗だ。しかしヘイストかかってるんだから移動力は余りまくってるし(笑)」
ローグ「三度目でようやく抜けられた……。防御的戦闘でダガーを抜いて攻撃!」
DM「おめでとう。だがダメージは全く通らない。さて、背後に抜けた侵入者を優先的に排除させて貰おう!」
クレリック「それはそれでやばい! 回復が届かない!」
DM「ええと19ダメージと21ダメージ」
ローグ「幽遁の術を使用して消えて攻撃……するもやはり通らない」
DM「消えちゃったから挟撃が乗らなくなったぜい」
ウィザード「まぁ、それはしょうがない。このままじゃ殴り殺されるし……」
 優勢に削り合う前衛が地道に半分近くまでストーンゴーレムを削っていたのだが、その二人に集中していたゆえにろくな防御呪文の支援を受けていないローグがピンチに!
DM「消えてるから50%ミスで、一発目が外れ。二発目は……おっとクリティカルヒットで46ダメージだ」
ローグ「し、死亡。(昏倒域突破して)即死。潰されました。まぁ仕方がない……」
DM「クローズウーンズはもう無いんだっけ?」
クレリック「あ、そうじゃ。クローズウーンズがあるではないか」
ウィザード「いやぁ……幽遁の術で消えてるから呪文の対象にできない……」
DM「にょろーん」
ウィザード「わ、私がなんか余計なこと言ったかもしれない……」
DM「前衛二人がAC底上げしまくってキュアも随時受けつつ渡り合ってる中、素のローグが単独で乗り込むのはヤバいよ〜」
ウィザード「普段なら前衛とそんな変わらないんだけど、今回は圧倒的に強化呪文の差があったのを失念していたわ……あと後方へ突破したらターゲットが変更になるのも予想できたのに……」
 その後は順当に前衛が削り勝ち、例によって資金調達のために撤退→換金→補充コンボ。

 
 ストーンゴーレムの背後の壁が怪しいと踏んだので、ローグが近づくぜ!
ローグ「角を曲がったら視認します。ダイス目が……1」
DM「まぁ技能判定にファンブルは無いしな(笑)」
ローグ「次はそこの窪みまで進んで視認……ダイス目が2(笑顔を引きつらせつつ)」
DM「うむ。君は特に不審な点を感じずに突き当たりまで近付いて……ご想像通り奇襲。壁に擬態していた敵が組み付いてくる」
 そして普段ならこまめに「ローグが数歩進んで斥候→安全が確認されるとファイター以下後続」という手順を踏んでいる彼らなのだが、今回に限っては「ローグだけが先行」というミニチュア運びをしていた。これを意図的な単独行動と解釈してDMは処理していたのだが……。
DM「じゃあメイスファイター達には先行したローグの悲鳴が聞こえる」
ローグ「あう」
メイスファイター「悲鳴ってそれだけかっ!(笑)」
ローグ「アウチアウチアウチアウチエスオーエス!!(笑)」
メイスファイター「ていうかいつも通り追尾してるつもりだったぜ!」
DM「うーん。ミニチュアが動かされてなかったからなぁ」
ウィザード「『こーいうつもりだった』を言い出すとキリがないわ。その為にミニチュア使ってるんだから」
 妖怪ぬりかべならぬアースエレメンタルウォールに、圧死寸前まで追い詰められるローグ。主役がメイスファイターからローグにバトンタッチか!?
 しかしファイターコンビとまともに殴り合えば、所詮脅威度6なので呆気なく粉砕されるのであった。
メイスファイター「こいつは金にならんのか!?」
DM「自然の石に還ったね(笑)」
ウィザード「元エレメンタルの石、として売れないかしら。いい笑い者だろうけれど(笑)」

 
 いよいよ本格的に内部探索を始めたパーティー。その中の一つに、あからさまに怪しい石像が鎮座。
ウィザード「これは動くでしょ」
メイスファイター「間違いなく」
クレリック「どう見ても敵です」
メイスファイター「金蔓だぜ!」
クレリック「金蔓になるのかさらなる出費となるのか(笑)」
ウィザード「まぁ……やっぱりここは戦いましょう」
クレリック「避けるわけにはいかぬぞ」
ウィザード「ACを上げましょうか。あとメイスファイターにディスプレイスメントで、二刀流ファイターにインビジビリティでゴーよ!」
DM「ではイニシアチヴを各自振るとよい」
ウィザード「じゃあとりあえず部屋に踏み込むギリギリまで進みましょう。そしてスポンテイニアス・サーチ」
DM「罠は見当たらないと思った」
ウィザード「次はディテクトマジックかな」
DM「石像に魔法反応があるね」
 以降、「ここはやっぱり戦う必要ないんじゃない?」「いやしかし倒せば金が」といったやりとりが二〇分以上続き……。
DM「さっきかけた強化呪文は片っ端から効果切れたんじゃなかろうか」
 ハウスルールとして、非戦闘時における思考時間はダイレクトにゲーム内時間も経過しているという処理なのです。なぜなら、罠の類というのは「侵入者を殺す」よりも「疑心暗鬼に陥らせて侵攻速度を落とす」ことを目的に設定されていることも多々あるから。ゆえに「アクションを消費していないので1秒も経過していません」では形骸化してしまうのだ。
ウィザード「切れちゃったんならしょうがない。戦闘の余地が無くなったから撤退!」
ドラゴン「生きて返すわけがないだろうがぁぁぁぁ!! 我が留守の間に多数の部下共を殺しおって……許さぬ! 絶対に許さぬぞ!」
DM「というわけで押し込み強盗に怒り心頭なアースドラゴンの一種、ファングドラゴンが地中から現われて最後尾に奇襲をかけてくる」
ウィザード「防御的発動でグレーターブリンクを唱えます。判定成功したんで……」
DM「じゃあそれに機会攻撃します」
ウィザード「え?」
DM「呪文発動妨害っていう竜専用特技持ってるんだ。こいつの機会攻撃範囲内で防御的発動すると、攻撃ロールに+4で機会攻撃喰らうよ。目標値39の精神集中判定どうぞ」
ウィザード「…………酷い」
DM(まぁこれは使ってくるの半分ハウスルールみたいなもんだしなぁ。その代わり自分も呪文使えんのだよ)
 ザ・阿鼻叫喚。部屋に踏み込んだらゴーレムの起動フラグという推理を前提にしている為、下がりたくても下がれない。必死に狭い通路内で取っ換え引っ換えし、前後を入れ替えると……。
ドラゴン「愚か者め。我に大地が障害となるわけがなかろう!」
 と、地中を移動してあっさり背後に回り込む。
クレリック「ドラゴンに強化呪文が切れたタイミングでバックアタックされて勝てるわけがない! 逃げるよう!」
ウィザード「でもあいつの近くでは呪文が!!」

 ガチで絶望的な状況である。まともな打開策も見出せないまま、圧倒的な攻撃力の前に敢え無く倒れるクレリック。
ドラゴン「せっかく倒しても呪文で復活されては困るからな!!」
 とうにHPが−10に達して死亡しているクレリックに対し、さらなる追い打ちをかけることで肉塊にするドラゴン。
ウィザード「一人死んだ今が最後のチャンスだわ……。四人なら一回のディメンションドアで転移できる! 荷物扱いになった死体を抱えて! 精神集中はAP使ってでもなんとか通すから!」
ドラゴン「チャージ……いやワープなどさせるかぁぁぁ!」
DM「強打分足して32ダメージ!」
ウィザード「精神集中ロール……足りない! AP使用で……成功!」
全員「た、助かった……」

 九死に一生を得た冒険者達を、入口の確保を引き受けてくれていたダークエルフが出迎える。
ダークエルフ「おいおい、今日はいつにも増してボロボロだな……なにドラゴンは実は不在だった? しかし帰って来てボコボコにされただと?」
 種を明かせば、ドラゴンが不在のうちに内部を制圧できていれば、ドラゴンを倒さずにお宝をゲット出来ていたシナリオだったのだ。で、潤沢な資金力を背景に、帰ってくるのを待ち構えてもよかった。しかし往復一週間の蘇生と買い物を繰り返した為、シナリオ開始から一月以上が経過していたという。
 ちなみにドラゴンの脅威度は10なので、レベル10の5人パーティーならまぁ資金力を背景にしなくても、どうにかなるレベルではあった。今回みたいな遭遇の仕方は最悪だが(笑)